最初で最後のラブ・レター　　２００１．５

バルンくんに障害があるとわかって約１ヵ月後の１０月１０日、パパの誕生日だった。
「おとうさん、なにか欲しいものある？」
しばらく考えてパパが言った。
「そうだなぁ。バルンくんにおとうさん誕生日おめでとうって言って欲しい。」
とても切実で、悲しい願い事だった。
それから１ヵ月後、１１月１０日は私の誕生日だった。
その数日前、私は探し物をしていて普段ほとんど開けない引き出しを開けた。
そこには見慣れない封筒があった。
中をあけてみると手紙のようだ。
少しドキドキしながら読んだ。
それは私の誕生日に渡そうとパパが書いた手紙だった。
あとで清書するつもりらしく、ミスコピーの裏に走り書きのように書いてあった。
バルンくんのこと、アルファくんのこと、私たち夫婦の絆のこと、
これから先の私たちの人生のこと、
パパの今の想いを綴った優しく力強い手紙だった。

誕生日よりも一足早く見つけてしまったため、清書してもらえなかったが、
この最初で最後のパパからのラブ・レターは大切にしまってある。
私が死んだら棺に一緒に入れてもらおう。
もし私よりパパが先に死んだら、告別式で朗読しよう。
「やめてくれ〜」と生き返るかもしれない。